駅のロータリーで数分待っていると、チャイルドシートに息子を乗せて妻がやってきた。今日は道が混んでいて遅くなったという。妻は昨日の日中、母親を術後の受診に連れていっていたはずだ。義母は先週、下肢静脈瘤のレーザ焼灼術を受けている。
妻が運転しながら言う。
「今日は、病院で3人の人に話しかけました」
「へえ」
「一人目は、駐車場から歩いている時に見かけたおばあさん。1歩か2歩、歩いては休んでいるので気になっちゃって。車椅子を持ってきましょうかと声をかけたんだけど、『いや~ええです』って言うの。しかも声に全然元気がない」
「じゃあ一旦受付に行って・・・」
「そう。玄関まで先に行ったら、”ボランティア” って書いた名札した若い女の子・・・たぶん学生さん?が居たから、ちょうどいいやって思って、『こんな感じのおばあさんが居るから、車椅子で迎えに行ってあげて』ってお願いしたの。そしたら、『わかりました~』ってすぐに行ってくれたわ。で、その時に、その子が口唇口蓋裂だったと分かったんだけど、もう行っちゃったあと」
「まあ、いい事したね」
「うん。でね、次は会計の時、どう並んだらいいか分からなさそうなおじいさん。だから声をかけて座っててもらって、あたし達の会計の順番になった時に、係の人に『あそこのおじいさんの会計をしてあげてください』ってお願いしたの。耳が遠いみたいで、係の人も大きな声で話しかけてたわ」
「うんうん。で、3人目は?」
「病院の食堂で母と一緒に食事をとった後で帰ったんだけど、玄関でさっきのボランティアさんがいたの。おばあさんの事聞いたら『ありがとうございます。車椅子でお連れしました』 って。でね、『本当に失礼だったらごめんなさい。口唇口蓋裂だったのよね?』って聞いたの」
「お~~」
「そしたら『そうです』って。あたし、『この子(息子)も両側の口唇口蓋裂なんです』って言って、お話を聞かせてもらったの」
知らない人でもグイグイ話しかける妻らしい。特に昨日はバイタリティに溢れていて、いわゆる「無双状態」。
ボランティアさんに聞いた話の要点は以下のような感じだ。
- 15歳位まで言語治療をした。小学生の頃まではかなり頻繁だった。
- 「言語の先生」が怖くて行くのが嫌だった。声を録音して親に行ってもらったことも。
- うまく発音できなかったし、小さい頃はあまり喋らなかったと思う。
人それぞれだと思うが、やはり言語治療に頻繁に通う可能性も小さくないようだ。それにしても「言語の先生が怖かった」というのは、親にとってはちょっとショックなことだ。施療者が患者に恐れられていては・・・特に継続的なリハビリが必要な疾患なのだから・・・治療に悪影響が出る可能性がある。小さな子供は施療者の交代を訴えることもできないだろうし、そうした子供の気持ちは親が汲み取ってあげるようにしたいものだ。
だが、その子は(病院でボランティアをしているくらいだから)おそらく医療関係の学校に進んだのだろう。どの方面を目指しているのかまでは、妻は聞かなかったらしい。
「言語聴覚士(ST)とか目指してるのかな」
「聞かなかったわ・・・。でも普通でもSTはタイヘンよ。発音指導するんだから自分が正しい発音できてないといけないし」
「そうだね。普通の人より何倍も努力しないといけないかもしれない・・・けど、もしSTになれたら、当事者の経験があるから、すごくいい『言語の先生』になれるかも」
「そうだわねぇ。すごく感じのいいしっかりした子だったから、何になるにしても頑張ってほしいわ」
・・・
息子は昨日もヤンチャし放題。狭い所に入って遊ぶのはもちろん、(私の監視のもと)階段を昇り降りして遊ぶこと20分以上。さすがに疲れるのである・・・
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