2013年5月15日水曜日

生後13日目 医大附属病院受診・退院

いよいよ医大附属病院受診の日だ。現在午前2時50分。私はどうしても外せない作業があり、午前4時出社の時差出勤をした上で、午後半休扱いにして病院に向かう。妻は後から現在の病院に行って息子の退院手続きを行い、息子を連れて医大附属病院に行き、私と落ち合う予定だ。

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午後5時。病院から帰ってきたところ。遅くまでまでかかるかと思っていたけれど、意外と明るいうちに帰ってこれた。とは言うものの、大きな病院なので待ち時間がとにかく長い。10時半の予約だったが、形成外科の診察室に入れたのはお昼を回っていた。

診察を1時間半ほど待っているあいだ、やたら大きな声で受付に難癖をつける爺さんがいて、せっかく寝ていた息子が起きてしまった。待合にはもたくさん小さい子がいてビックリしていたし、さすがに頭にきたので、待合にいたもう一人の男性と協力して追い出してしまった。まあ殴られて怪我してもそこは病院だ。

・・・そんなくだらないことはともかく・・・

形成外科の診察では、口唇口蓋裂のひと通りの説明をしていただいた。最初の口唇裂の手術は、やはり3箇月くらいが目安とのこと。ホッツ床については、この病院では昨年までおられた矯正歯科の先生が他所に移られており、その矯正歯科への紹介という形で、そちらで型取りを行うことになった。ちょうどその矯正歯科の先生が同室されていて、左右の耳の位置や手足の指の状態まで細かく診てもらえた。診察の合間にその矯正歯科に予約を取り、明日伺うことにした。仕事との兼ね合いがちょっと厳しい部分もあるが、できるだけ早く治療を開始したほうが良いということだったので、最悪休日出勤でカバーして調整する。

形成外科の次は耳鼻科で、ここは簡単なチェックのみ。その次はリハビリテーション科。構音障害などについて説明を受けた。耳鼻科もリハビリテーション科も、1箇月ごとの形成外科の受診に合わせて診察を受ける。

リハビリテーション科の待合では、隣県から来られたという、口唇裂手術後間もない男の子を連れたお母さんとおばあちゃんにお話を伺うことができた。手術時の体重は6kgに少し足りなかったが、問題なかったとのこと。お顔を見せていただいたが、正直どこが手術痕か、一見しただけではわからない。お母さんに「うちの子も、そのお子さんと同じでしたよ」と伺って、かなり安心することができた。妻も、今日の受診で最も印象深かったのは、その子とお母さんに会えたことだと言っている。面識のない方に声をかけていいものか少し遠慮があったが、話しかけて良かったと思っている。



そして息子は、初の我が家だ。これからは4人の生活が始まる。他にもいろいろ書きたいことがあるが、さすがに疲れたので明日以後の記事で。

2013年5月13日月曜日

生後11日目 凍結受精卵をどうするか

昨晩妻と話したのは、不妊治療から心拍が確認できて、悪阻が激しくなってきた頃のこと。それから、まだ凍結保存してある残り2つの受精卵のこと。

昨年の夏の不妊治療の時の受精卵は合計5個。そのうち3個の分割状態が良く、1個を選んで戻したの去年の8月だった。それまでも何度も戻しては着床しなかったので、着床しなかった時に備えて残り2個は凍結保存されたままとなった。ほぼ妊娠全期間に渡る激しい悪阻と、足掛け3日間・54時間の陣痛を乗り越えて息子が生まれた今、保存されている受精卵をどうするかそろそろ決めるべき時期だ。

受精卵の画像やスケッチを見なおしながら、あの時の受精卵のうちの一つが、こうして息子になったのだと思うと、廃棄してしまうことはやはり心理的抵抗が大きい。しかし、妻の体力や年齢を思えば着床確率は低いし、着床したとして、もう一度あの壮絶な状況を体験させたいとは思わない。

一方、考えたくないことだが、息子に万が一のことがあったら?ということも頭をよぎる。

結局、来月初めに不妊治療の先生にお会いするときに、保存終了をお願いすることにした。それがケジメであると思うし、息子を育てあげるという覚悟だ。もし研究目的で使用されることがあるなら、同意する。不妊・あるいは他の疾患の研究の一助となるならば、それも供養の一つになるはずだ。私たちは、息子の誕生日と同じように、受精卵の保存が終了した日を覚えていたいと思う。

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会社へ家族異動届を提出する際に必要な住民票を、妻が市役所で取得して車で会社まで持ってきてくれた。異動届を出した上で、被保険者有資格者証かそれに準ずる書類をもらっておけば、保険証ができるまでの期間、代わりに使用することができる。これは明日作ってくれるから、明後日の医大附属病院での診察に使えるだろう。ちょっとギリギリだったが。

娘の奨学金申請のために、所得証明の取得も必要なのだか、今年度分は明日からの交付なので、また明日も妻に市役所通いをしてもらわなくてはならない。幸い体調はかなり良いらしいのであまり心配はしていないが、まだ産後10日。無理はさせられない。

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今日は私と妻で、シリンジにそれぞれ1本ずつチューブ経由で授乳した。合わせて65cc。注入に合わせて、保湿剤のジェルを付けた小指を口に入れてやるようにした。せめて何か吸ってるような感じにしてみたかったのだが、当の本人はほとんど寝ていたようだ。今日の体重は3283g。順調に増えて出生時体重を超えた。

現在の心配事といえば明後日からの授乳だが、医大附属病院で診察してもらう前にあれこれ考えても仕方がない。今できることをやるだけだ。


2013年5月12日日曜日

生後10日目 私の母と、初対面




妻は退院してから、必ず5時前に起きている。乳房が張るせいもあって、3時半に起きることもあるそうだ。無理してないかと聞いてみたが、夕方には少し眠くなることもあるそうだが、体調は良いらしい。退院が延期になった時は、ちょっと泣きそうになったと言ってたが 、基本的には明るく過ごしている。今朝は頂きものの赤ちゃん服をずっと分類していて、可愛いものを見つけては「うゎー、うれしー」と歓声をあげている。


口唇口蓋裂にかぎらず、生まれた子どもになんらかの障害があった場合、お母さんのショックは大きいと思う。そこで重要なのが、妊娠中のできるだけ早い時期での正確な診断だ。それによって両親の心の準備、出産時のサポート、その後の地域連携などがスムーズに行える。

妻がかかった産科医師は、県内でも随一の技術と見識を持ったベテランの先生。数百キロの距離や3~4時間にも及ぶ待ち時間をものともせず、他県からもその先生の診断を受けるために来られる妊婦さんも多数おられるほどだ。妻の場合は、産科外来看護師時代に長くその先生のもとで働いていた(スタッフには滅法厳しかったそうだ)ということもあり、高齢出産でもあるし、万全を期してその先生にかからせていただいた。そういった情報に乏しい方、特に高齢出産の方は、妊娠が判明したらできるだけ多くの正確な情報を収集して、信頼できる先生にかかっていただきたい。

息子の口唇口蓋裂を先生に教えて頂いたのは19週5日での4Dエコーを見ながらのこと。先生の言い方から、その前のエコーでも疑いは持たれていたようだ。ダウン症に関してはそれよりかなり前の段階で「おそらく問題ない」と告げられていた(私は不勉強なことに、エコーでダウン症のスクリーニングができるという知識がなかった)。

出産まで5箇月あることで、心の準備が十分にできる時間があり、妻の気持ちが落ち着いていたことが何より大きい 。私が夫として心がけていたのは、「大丈夫。全然問題ない」と大きく構えること。ただでさえ妊婦は精神的不安定になりがちだし、まして妻は2箇月入院するほどの悪阻。胎児の病気の不安まで抱えていては、出産まで耐えられなかったのではないだろうか。

そういった心の余裕からか、誕生から10日目の今、妻は息子の顔を私以外の人間に見られることへの抵抗が少なくなってきたようだ。だが心ない言葉を吐きそうな身なり(必ずしもそうとは限らないが)の若い男女には、絶対に見せないと言っている。人を外見だけで判断するのは良くないが、しかし内面は必ず外見に出てくる。だから誤解されやすい身なりをしてはならない-というのが、私達夫婦の考え方だ。

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今日は正午に母を迎えに実家に行って、病院に連れて行って初めて会ってもらった。晩婚で私の子の顔を見るのを随分待たせてしまった身としては、親孝行のスタートラインには立てたのかなと思う。


母はさすがに手慣れた様子で息子を抱いて、初対面の孫に色々と話しかけてくれた。もちろん母にも事前に口唇口蓋裂のことについて十分説明できていたので、母としても落ち着いて対応できたのだろう。今日は息子も起きている時間がとりわけ長く、母にも喜んでもらえた。

チューブによる哺乳はコンスタントに3時間毎・60ccで、体重も出生時に戻った。これは一般的な推移だから、哺乳のハンデを考えれば息子は人一倍頑張っていることになる。父ちゃんも負けずにがんばるからな。

昨日書いたように、今後のの予定は明日・明後日と入院し、明々後日の朝に退院。その足で医大附属病院ヘ向かう。その日私はどうしても外せない仕事があって、未明に出勤して3時間ほど作業し、午後半休扱いにしてもらって、何とか医大付属病院での初診に間に合わせるつもりだ。

2013年5月10日金曜日

生後8日目 口腔内の潰瘍で退院できず

急遽ベビーカーの手配を考えている。来週から市内の大学附属病院の形成外科に通うことになるのだが、ものすごく大きな病院で、駐車場も広大。駐車する場所によっては数百メートルも歩かなくてはならない。私が一緒ならまだしも、妻ひとりで連れて行かなければならないときには負担が大きすぎると思うのだ。

ただ、軽量・コンパクトなものは生後1箇月くらいから使うもの。生後すぐに使えるものは大きくて重い。レンタルと購入、あるいは友人のお下がりを組み合わせるのがいいだろうか。来週の検査は私も行くので、6月まで病院に行くことが無いのなら軽量なものを次回通院までに入手しておけばよいだろう。

そんなことを考えながら出社して、そろそろ午後半休の届けでも出そうかと思っていたら、妻からのSMS。

「○ちゃんは口の中がただれて潰瘍ができ、チューブになったようです。退院は延期になりました(T_T)」

妻は(もちろん私も)退院をとても楽しみにしていた。

昨晩は「お義母さんにやっと会わせてあげられる!」と、体調が優れずまだ孫と対面していない私の母に見せられるのを喜んでいた妻。そして私も、初の風呂(沐浴)のイメージトレーニングをしていた・・・。

午後半休は息子の退院か医大附属病院での検査時に使いたいので、今日のところは取得しないことにした。出生届は、今日妻に出してもらうことにし、余裕があれば同時に市役所の保健推進課で育成医療などについて聞いてくるようにSMSを送信した。そしてもう一通。

「退院できなくて残念(>_<) でも頑張ろう」

ごく細いとはいえ、チューブが挿入された状態では退院することができない。潰瘍の状態によっては、来週の医大附属病院の検査まで入院することになるのだろうか。

口唇口蓋裂の子供への哺乳が大変なのは想像していたが、「時間がかかるのだろう」くらいのイメージで、頑張って飲もうとするあまり口腔内に潰瘍ができるという事までは想像できていなかった。潰瘍が出来ればチューブによる哺乳となり、退院することができない。誕生後、状態によっては比較的長期の入院になる可能性があることは、胎児が口唇口蓋裂と診断された親御さんには知っておいてもらいたい。

夕食の後、病院へ。

チューブを通しての授乳は済んでいるかと思ったが、まだだったので、妻が抱いてさすりながら看護師さんが30ccのシリンジで2回分。大変熱心な若い看護師さんで、息子が落ち着く寝かせ方や抱き方を丁寧に教えてくれた。




その結果、授乳後に爆睡する息子。チューブは可哀想だが、おかげでしっかり授乳できていて、体重もまた増えている。

妻によれば、日中に言語療法士さんから電話でアドバイスがあり、「口腔保湿ジェル」というものを口の中に塗ることによって爛れや感染を抑える効果があるという。妻は早速ドラッグストアで購入し、すぐに病院に持っていった。





妻が購入したのは、「オーラルプラス うるおいキープ」という和光堂の商品。トレハロースやヒアルロン酸が配合されていて、ノンアルコール・無香料・パラベン無配合とある。乳児の口に塗るときには 米粒大くらいを使う。価格は980円くらい。特殊な商品ではなく、普通に売られているそうだ。


その後、妻が市役所に行ってくれて出生届はやっと提出できた。また、保健師さんのいる部署で、自立支援医療(育成医療)の書類ももらえた。私も最近調べて知ったのだが、「18歳未満の子どもについて、生活能力を得るために必要な医療の一部を公費により負担する制度」を自立支援医療(育成医療)と呼び、口唇口蓋裂も状態によって対象となる(はず)。申請は毎年必要だが、受給者証があれば自己負担額が1割に抑えられる。また、所得によって負担上限額があり、平均的なサラリーマンの年収であれば月額で1万円だ。この制度は是非利用すべきだろう。

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この土日で退院はないだろうから、水曜に医大附属病院に診察に行くとすると、そのあいだには月曜と火曜しかない。チューブがとれなければ退院できないことも考えると、今の病院から医大附属病院へ通うことになるのだろうか。あるいは転院になるのか。ちょっと先が見えないなぁ。